コラム
アクセルとブレーキの踏み間違い事故は、なぜ起きてしまうの?
こんにちは! ペーパードライバー講習のサワムラガクです。
ときどき、テレビで「アクセルとブレーキの踏み間違い事故」に関するニュースが流れますが、「自分はそんな間違いは起こさないから大丈夫!」と思ったことはありませんか?
実は、踏み間違い事故は年齢や経験を問わず、誰にでも起こり得るのです。
今回は踏み間違いが起きてしまう理由について、詳しく解説します。
ペダル踏み間違い事故の年齢割合
ニュースでは高齢者ドライバーによる踏み間違い事故の報道が多いため、「踏み間違いを起こしやすい人=高齢者」と考える人も少なくありません。
ですが、実際には若者による踏み間違い事故も多数発生しています。
公益財団法人 交通事故総合分析センターの調べによる、2018年~2020年に発生したペダル踏み間違い事故の運転者年齢層は、下記の通りです。
- ・24歳以下…1,613件
- ・25~34歳…1,161件
- ・35~44歳…931件
- ・45~54歳…962件
- ・55~64歳…1,119件
- ・65~74歳…1,870件
- ・75歳…2,080件
このように踏み間違い事故は、全年齢で発生しており、24歳以下の若いドライバーも1,600件以上発生しています。
つまり、踏み間違い事故は年齢や経験を問わず、誰にでも起こり得るのです。
なぜ踏み間違いが起きるのか?
踏み間違いは「低速走行時」に発生しやすいと言われています。
通常の走行ではアクセルを踏んだら前に進み、ブレーキを踏めば停止します。
アクセル・ブレーキを操作する時に、頭で「今はアクセルを踏む」「ブレーキを踏む」と毎回考えて行動することはありません。
アクセルを踏んだら進み、ブレーキを踏めば止まると脳に刷り込まれているため、“当たり前の行動”として自然と体が動きます。
しかし、低速走行時には「ブレーキを踏みながら前に進む」という不可思議な状況が発生します。
例えば前の車との距離をとるために、ブレーキを軽く踏んで速度を落としつつ、車は前進します。
この状況の最中に飛び出しや段差など、意識を取られる“何らかのきっかけ”が起きると、脳内は下記の認識をしてしまいます。
(ブレーキに足を置いている状況で)
「車が進んでいる」=「今はアクセルを踏んでいるはず」と、瞬間的に“誤認”する
↓
「アクセルを踏んでいる」=「隣のペダルがブレーキのはず」と、さらに“誤認”する
↓
「ブレーキのはず」のアクセルを踏んだら、意に反してスピードが上がり、パニックに繋がってしまう
これが、踏み間違い事故の基本的なメカニズムです。
若者と高齢者に踏み間違い事故が多い理由
先ほど「ペダル踏み間違い事故の年齢割合」を紹介しましたが、24歳以下の若いドライバーと65歳以上の事故が特に多く発生しているため「運転初心者とご高齢者は、踏み間違い事故が発生しやすい」と言い換えられます。
車の運転は、基本的に“体で覚える”ことが多いです。
例えば自転車に乗る練習をするとき、言葉の説明だけで乗れるようになる人は少ないですよね。
サドルにまたがり、ペダルを漕いで、バランスを保ち、ブレーキの強弱を覚え、ハンドルの回す角度も試して…と、練習を繰り返してだんだん乗れるようになり、日常的に乗ることで経験を積み、無意識に乗れるようになります。
車も同じで、日常的に車に乗ることで、身体が運転の仕方を覚えていきます。
これは言い換えると、脳へのインプットが繰り返し行われることで、意識層にも無意識層にも学習を行い、その結果として「覚えた!」となっていきます。
初心者の方が踏み間違い事故を起こす理由は、「無意識」と「脳に対する学習」にあります。
初心者は運転の試行回数が少ないため、認知と無意識行動がつながっていない状態なのです。
状況に応じた行動の学習が少ないため、「この場合はこうする」という“脳に対するインプット”も少なく、結果として誤認や誤操作をしやすい状況にあります。
つまり、若者の踏み間違い事故が多い理由は、若者に運転初心者の方が多く、初心者は誤認・誤操作が多いからです。
一方、高齢者が踏み間違い事故を起こす理由は「認知能力の低下」にあります。
高齢者の場合、運転の土台となる「認知能力」に問題が発生してしまいます。
その結果、運転の基本的な流れである「認知→判断→操作」が正しく機能せず、事故に繋がってしまいます。
とりわけ高齢者の踏み間違い事故については、「自分の行動(状態)を瞬間的に認知する機能」が弱まっているため、発生が多くなっていると考えられます。
踏み間違いが事故に繋がる理由
「若者や高齢者の踏み間違い事故が多い」と説明しましたが、実はその中で「死亡重傷事故件数」を抜き出すと、大きな差があります。
- ・24歳以下…41件
- ・25~34歳…22件
- ・35~44歳…42件
- ・45~54歳…36件
- ・55~64歳…85件
- ・65~74歳…226件
- ・75歳…362件
65歳以上の高齢者の踏み間違い事故による死亡重傷事故件数は、他の年齢層に比べると格段に増加しています。
これは、加齢により「自分の行動(状態)を瞬間的に認知する機能」が弱まっているためと考えられます。
分かりやすく言えば「パニック状態に陥りやすく、パニックから回復する能力も欠如している傾向にあるから」と考えられます。
高齢者以外の年齢層の場合、踏み間違いに気付き、瞬時にブレーキを踏むことができる方(運動能力・判断能力がある方)が、一定数存在します。
実際、私たちのペーパードライバー講習でも、実に7割以上の方が教習中に踏み間違いを行います。ほとんどの初心者さんが通る道です。
しかし、踏み間違った後に98%を超える方は、自分でリカバリーを行ってくれます。
「踏み間違った」という状況を理解して、瞬時に対処できる運動能力のある方が圧倒的に多いのです。ここが高齢者との大きな違いです。
このような理由から、事故につながりそうな状況でも修正行動で回避できる場合が多く、大事に至らない傾向があります。
また、瞬間的な状況把握が生きていることも多く、パニック状態に陥ったとしても“寸前での回避行動”が発生しやすい傾向にもあります。
踏み間違い事故を起こさないために、できること
とても簡単な言い方をすれば、「上達すること」が一番の回避行動につながります。
「正しい行動」を“反復”して、脳に「正しい行動」をインプットし続けること。
これが何よりの予防です。
また、簡単な予防としては「低速走行時に意識を保つ」ことが挙げられます。
無意識がミスしてしまう状況を、顕在意識でカバーするのです。
低速走行の状態(一時停止、駐車、停車、低速カーブなど)になったら「いま、自分の足はアクセルを踏んでいる」と確認(意識)するだけで大丈夫!
たったこれだけでも、十分な予防になってくれます。
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公開日:2023.09.25 最終更新日:2023.09.25